子供用のプログラミング言語として、非常にたくさんの言語が存在しています。例えばScratch(スクラッチ)MOONBlock(ムーンブロック)プログラミンなどがあります。
本教室では「Viscuit(ビスケット)」というプログラミング言語を教材に選びました。今回は、なぜビスケットを選んだかを書きたいと思います。

私がビスケットと出会ったのは、2015年4月に行われた合同会社デジタルポケット様主催のファシリテーター講習でのことでした。この講習は、ビスケットの講師(ファシリテーター)を養成することを目的に行われているものです。
私はプログラミングについての知識や経験もあり、なにより子どもたちが好きということもあり、子どもたちに向けてのプログラミング教室を開きたいと以前から思っていました。しかし教える方面については全くの未経験で、どうしたら教えるスキルを身につければよいか模索を続けていました。そんな中見つけたのが、このファシリテーター講習でした。

この講習を通じてビスケットのことやファシリテーターとしてどのようにプログラミングやコンピュータのことを伝えていくかをワークショップ形式で学ばせていただきました。
ここでいうワークショップ形式とは、講師が一方的に講義をするのではなく、参加者も発言したり実際に手を動かしたりして一緒に考えながら講習を進めていく手法です。

この講習を通じてビスケットに対して感じたことは、他の言語と比べて明らかに性質が異なることです。
一般的なプログラミング言語がコンピュータに対して「やってもらいたい命令を漏らさず全て伝える」のに対して、ビスケットは「やりたいことだけを伝える」手法を採っていることです。
(余談ですが、今後発展が期待されるAI(人工知能)プログラミングで使われるプログラミング言語は、ビスケットの手法に近いものが主流なのだそうです。)
このことにより、難しいことを考えずとも直感でコンピュータを動かすことができます。やりたいことを伝える方法も厳選されているので、プログラミング言語を学ぶための時間はビスケット以外のものと比べ非常に少なくて済みます。
また、絵を描いてそれを動かすことで、何がどう動いているのかが視覚的にすぐ分かります。このため、コンピュータの本質を容易に伝えることができます。

ビスケットで巨大なシステムを構築することはできないかもしれませんが、プログラミングとはどのようなものか、コンピュータとはどのようなものかを、まるで遊びの中で「粘土」を扱うように自然と身につけることができます。
ITシステムを新しく構築する現場では、初めにどのプログラミング言語を使うか選択します。これは、プログラミング言語には得手不得手があり、構築するシステムによって使い分けられるのが一般的だからです。
ビスケットに対してだと、教育用として特化していて、かつ、コンピュータの本質を伝えやすい言語だと言うことができるかと思います。
私はこの点において、ビスケットは子どもたちに最初に使ってもらうプログラミング言語として魅力を感じています。

ただし、ビスケットのような言語に最初に使う時期に関しては、適齢期もあるとも感じます。タレント兼プログラマとして活躍している池澤あやかさんは著書「アイディアを実現させる最高のツール プログラミングをはじめよう」において、大学時代に『車やネズミなどのイラストに、動きのルール(アルゴリズム)を追加して動か』すプログラミング学習用ソフトを使ってプログラミングを学んだそうですが、非常につまらなく感じたそうです。それは『実用性がない』ことと『実現できることが、面白味にかける』との欠点があると感じたから、とのこと。確かに、これは同感です。私も大学で初めて触るプログラミング言語として上記のプログラミング言語を触っていたら、同じような感想を抱いたかと思います。
文章(ネズミ)から憶測するにスクラッチを教材に使っていたのかと思われますが、おそらくビスケットを使っても同じだったでしょう。

しかし、小学生以下の子どもたちに対して実際にワークショップを開いてみて感じることは、ビスケットのプログラミング自体を楽しんで、そして時間が経つのも忘れて熱中してくれることです。集中力や発想力に驚くことも非常に多いです。そのため、小学生以下の頃にビスケットなどのプログラミング言語に触れることにより、プログラミングはどのようなものか、コンピュータの本質はどのようなものかを自然と身につけやすいのではないかと感じます。

ビスケットの魅力としてもう一つ。それは教える側にも発見があることです。
「やってもらいたい命令を漏らさず全て伝える」のではないので、どう動くかは全てビスケット任せです。たまに「こういう風に動くんだ!」とびっくりすることがあります。あとになって考えると「そうか、そうなんだ」と思うのですが、そのような発見があることが非常に楽しいです。
このことも、プログラミング教材にビスケットを選んだ理由の一つです。教える方も学ぶ側も、楽しいのが一番ですから!